青森県上北郡七戸町字町7-2
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ブログ

「聴く」ということ

2024/04/01
 ご進級おめでとうございます。お家の方と一緒に進級をお祝いできることは、子ども達にとって新たな気持ちで今年度を迎える機会となります。また、職員も改めて気を引き締める機会にもなります。保護者の皆様と連携しながら今年1年子ども達にとってより良い環境作りを進めていきたいと思います。
 今年度はめろんさんとぶどうさん、くるみさんとすももさんが同じお部屋で生活することとしました。異なる年齢の子どもが同じ空間にいることで、安全面や各お子様の成長差に更なる配慮が必要となりますが、年上の子たちが率先してリーダーとなったり、年下の子に思いやりを示したりすることで年下の子達はそれを学び、双方がコミュニケーションスキルを磨きより様々なことに興味関心を持てるといった利点もあります。同年齢保育とはまた違う情操教育に繋がればと思っています。
 さて、4月の徳目(より良く生きるための基本となるもの)は「合掌(がつしよう)聞法(もんぽう)」「敬う心をもって人の話を聞こう」という意味です。「聴く」は「聞く」より積極的に耳を傾ける意味合いがあります。異年齢保育を通して年上の子は「年下の子が言っているから」年下の子は「お兄さんお姉さんが言っているから」と相手を思いやり、双方話を「聴こう」とする機会が増えるのではと考えております。
 「話を聴く」ことは集団で生活する上で重要な土台です。それぞれが自分の好きなことを優先させていれば、保育士の話が通らず「私はあっちに行きたい」「ぼくはもっとこっちで遊びたい」となって収拾が付かなくなり、話を聴いている子達の活動も進まなくなります。これまで以上に色々な事にチャレンジ出来る集団になれるよう「話を聴く」を意識して関わっていきます。(2024.4)

智慧とは

2024/03/06
 町営のスキー場が昭和32年の開業以来、初めてオープンを断念するといったニュースが先日報道されました。今年は雪かきをする機会が本当に少なくて楽だった半面、雪を頼りにしていた方にとっては大打撃でもあるんだなと、雪が少ないことによるデメリットも考えさせられる機会となりました。園でも、そり滑りが出来なかった年は初めてだったのではないでしょうか。また、夏はこれまでにない暑さで、長い期間水遊びを楽しめましたが、9月に入っても暑さを心配する事態となりました。異常気象が通常になりつつある今、本当に見通しが持てない世の中になってきていると感じます。
 さて、3月の徳目は「智慧希望(ちえきぼう)」、「希望をもち、楽しく暮らそう」です。智慧とは物事を広い視野で肯定的にとらえ、新しい事態に対して問題解決が出来る知識の事を言います。これからは一層見通しがもてず、正解が刻一刻と変化していく時代になっていくと思います。だからこそ、この「智慧」が大切になってきます。見通しがもてることに越したことはありませんが、そうでなくても悲観せず、目の前にあるものを丁寧に取り組んでいくことが、前向きに繋がっていくのだと思います。
 学年が1つ上がり、りんごさんは小学生に、めろんさんからすももさんは1つお兄さんお姉さんになり、立場や状況に大きな変化があります。新しい環境でも、常に「明るく」、そして「正しく」見聞きし、仲間と「仲良く」協力してこれからを切り開いていくことを願っています。
 卒園・進級、おめでとうございます。(2024.3)

明らかにする

2024/03/06
 「諦観【たい(てい)かん】」という「本質を明らかに見て取る」「悟りの境地にあって物事を見る」といった意味のある言葉があります。なぜ、「諦(あきら)める」という漢字が入っているのに「本質を見る」になるのか不思議に思うかもしれません。ここでの「本質を見る」とは、起こってしまったことに対し「ああすればよかった、こうすればよかった」と色々考えるのではなく、「どんな状況なのだろうか」とよく観察し現状を理解するいう意味合いが強くあります。そして、自分の思い通りにならない結果に「何でこんなことになるんだ」と苦痛を感じるのではなく、「そんなこともあるものだ」と心穏やかに過ごすことが本来の「諦」の意味です。現在遣われている「断念する」という意味の「諦める」はもともと、もっと前向きな意味だったのです。
  2月の徳目は「禅定静寂(ぜんじょうせいじゃく)」、「よく考え、落ち着いた暮らしをしよう」です。ここでの「よく考え」とは、上記の「本質を見る」に繋がります。それまでの過程をいい加減にしたり、最初から諦めても良いということではなく、やれるだけのことはやった上で結果を受け入れることにより、落ち着いた暮らしが出来るということです。
 ロックバンドMrs.GREEN APPLE。子どもたちが大好きで、楽曲の1つ「ケセラセラ」が結構な頻度で家の中に流れています。この「ケセラセラ」も、もともとはスペインの言葉で「なるようになるさ」という意味があるため、ふと過去に書いたコラムを思い出し、「よく考える」ため、改めて書き直してみました。(2024.2)

笑う門

2024/01/05
 今年のM-1グランプリは令和ロマンというコンビが優勝し幕を下ろしました。トップバッターで漫才を披露したコンビが優勝するのは、第1回大会王者の中川家依頼、22年ぶりでした。そんなM-1グランプリですが、地域別の視聴率を見ると関西の方が関東の方より10%程高くなっています。しかし、都道府県別の視聴率を見るとなぜか青森県が全国で1番高いそうです。そのことを受けて、例えば、お笑いコンビサンドウィッチマンの富澤さんの台詞「ちょっと何言っているか分からない」が「ちょっと何言っちゅがわがんねぇ」といった具合に、青森県だけに歴代M-1ファイナリストのネタを津軽弁や南部弁に言い換えた番組PR看板が12箇所設置されました。そして、その設置場所を繋ぐと左上図のように【M-1】となるという手の込みようで、M-1グランプリPR事務局が感謝の気持ちを込めて企画したそうです。今年はどのくらいの方が番組をご覧になったでしょうか。
 1月の徳目は「和顔愛語(わげんあいご)」「柔らかい顔で、優しい言葉を」です。和顔とは笑顔のことですが、笑いや笑顔には脳の活性化や血行促進、筋力アップといった身体的影響と幸福感のアップといった精神的影響があるそうです。笑う門の「門」とは家族のことを指します。年末年始は気温が上がるようで、気温の上下がめまぐるしく体がついていかなくなりそうですが、笑いや笑顔の年末年始でご家族皆様ご自愛頂き、良いお年をお迎え下さい。(2024.1)

醍醐味

2024/01/05
 メジャーリーグの大谷翔平選手が2021年度ぶり2回目の年間MVPを受賞しました。今回も1位票が満票でこれは史上初の快挙なのだそうです。今年度は、日本が優勝したワールドベースボールクラシックという野球の世界大会でもMVPを受賞しました。公式戦終盤は右肘の手術のため試合には出られず、ご本人も「心残りである」とのコメントを残しておりますが、打者としてはアジア人初の本塁打王を獲得し、投手としても10勝を収め、「野球の神様」と呼ばれるベーブルースでも成し得なかった史上初の「2年連続2桁勝利&本塁打」も達成しており、大活躍の1年と言えるのではないでしょうか。
 高校生まで続けていた投手と野手の二刀流を、プロ野球でも続けることに「難しいのではないか」と考える人も多かった中、当時大谷選手の所属チーム監督だった栗山さんは「先入観にとらわれず」を意識してどうやったら実現可能か模索し「誰も歩いたことのない道を歩いて欲しい」という言葉をかけたことにより大谷選手は決断できたそうです。そして「練習って面白いんですよ。練習を通じて自分の長所や能力を『発見』することもそう。そういう『気づき』を得る瞬間があるのが練習の面白さ、醍醐味ですね。」という考え方がこれまでの様な結果に繋がったのだと思います。
 12月の徳目は「忍辱持久(にんにくじきゅう)」、「根気強く取り組もう」です。「忍」という漢字が入っていると「辛くても頑張る」のようなニュアンスや、「課題」となると解決が難しいイメージに捉えがちですが、課題を分解して手がつけられそうな部分から取り組むことで糸口が見えたり、少しでも解決に向かうことで、意欲も湧きやすくなったりします。根気強く取り組むためには課題のキリトリ方が重要なのだと思います。そこが一番難しいところですよね…。(2023.12)

諸法無我

2023/11/01
 明日はいよいよ運動会です。すももさん、くるみさん、ぶどうさんは少しずつ普段の生活で身につけた基本的生活習慣を競技に反映させ取り組みます。めろんさん、りんごさんは春から太鼓やカラーガードに親しみながら練習を積み重ねてきました。また、今年も子ども達はバルーン遊戯で協力して演技します。そして、今年はぶどうさん以上の親子競技をリレー形式で一緒に行うという初の試みもあります。子ども達はお家の方と競技をすることを非常に楽しみにしています。あとは、園庭で出来るよう天気が良いことを祈るばかりです。
 さて、今月の徳目は「同時協力(どうじきょうりょく)」、「お互いに助け合おう」ということです。私の話で時々出てくる「諸法無我(しょほうむが)」「世の中のすべてのものごとは、つながりあっていて、個として独立しているものはなにもない」人で考えると「周りによって生かされている」と捉えることが出来ます。「個」が優先されてしまいがちな世の中ですが、周りがいるからこそ「個」が輝けるのであって、だからこそ周りを大切にしなくてはなりません。園目標の「仲良く」することは楽しく嬉しいことだ、他者を傷つけたりワガママを通そうとすることは悲しくつまらないことであることに気づき、自らの力で選択できるよう促せる環境を整えていければと思います。
 お笑いコンビ笑い飯の哲夫さんが非常に仏教に詳しく、さすが芸人と感じる言葉選びのセンスで仏教用語を面白く説明しています。引用したかったのですが、文章のほぼ全部になってしまいそうだったので泣く泣く諦めました。是非みなさんも検索してみて下さい。(2023.10)

とっておき

2023/09/08
 私が子どもの頃「とっておき」と呼んでいたものがあります。ミッキーマウスのアニメが好きだった私たち兄弟は、普段見ていたミッキーのビデオの他に、両親がどうしても出かけなくてはならず、子ども達で留守番をしなければならない時にだけ見ることのできるミッキーマウスのビデオがあり、そのビデオを「とっておき」と家族で呼んでいました。その当時は祖父母もいるので留守番として困ることはありませんでしたが、普段は見られないミッキーのストーリーが見られるとあり、滅多に留守番することはありませんでしたが、楽しみな側面もありました。
 今月の徳目は「報恩感謝」「あらゆることを有り難く感じよう」です。「有り難い」とは「存在することが難しい」という意味から「めったにないものに感謝する」へ転じていきました。今にして思うと「とっておき」があったからこそ留守番も苦にならずむしろ少し楽しみで、大げさに言えば「とっておき」を有り難く感じていました。今の世の中は本当にモノにあふれています。最近は「とっておき」という言葉をあまり聞かれなくなったような気もします。特に子ども達の欲しがるモノは比較的簡単に手に入る世の中になってきました。だからこそ、あえて「とっておき」を作っておくことが、有り難く感じられるような機会を作る1つの方法のように感じます。いずれにしても、何でもかんでも与えたりやってあげたりやらせてあげたりするのではなく、そのバランスが大切であるということだと思います。
 暑い日が続き、毎晩飲みたくなるところをぐっとこらえて、週末の「とっておき」にしてみようと思います。(2023.9)

自分を高めるために

2023/09/08
 今回、園だよりが600号を迎えました。平成26年に副園長として文責を引き継いで9年5ヶ月。月1回のコラムではありますが、なんとかここまで続けることが出来ました。これも読んで頂いた方々から「コラム見ました」「このコラムはどういう意味ですか」などとコラムに関して声をかけて頂いているからこそです。私のつたない文章にお付き合い頂きこの場をお借りしてお礼申し上げます。そして、これからも宜しくお願いいたします。
 これまでのコラムを読み返してみると、そういえばそんなことを考えていたなと思いにふけることもあり懐かしいですが、このように保護者の皆様にお伝えする内容を考える事で、自分自身の考えを整理する良い機会にもなっていたことに気づきます。たった月1回のことではありますが非常に有意義な機会です。
 さて、8月の徳目は「自利利他(じりりた)」「自分を高め人に尽くそう」です。世の中の変化は年を追う毎にめまぐるしくなり、情報をどんどんアップデートしていかなくては対応できない状況になりつつあります。その中で、自分の考えを整理し、自分自身の核となるものを見つけたり、見失わないようにしなければただ情報に飲み込まれていくだけになってしまいます。私のコラムは自利利他のような高貴なものではありませんが、自分を高め人に尽くすためには、しっかりと自分を持つことが大切であることを徳目と600号という切りの良い数字を見て感じました。
 「具体的に、分かりやすく」を意識した保育を目指しているはずなのに、非常に抽象的な内容になってしまいました…600号に免じて許してください(^_^;)(2023.8)

より、そう、ちから

2023/07/06
 先日、とある社会福祉法人の方と「寄り添う」という言葉についてどう考えますかと聞かれ、意見交換をしました。「寄り添う」とは元々「もたれかかる、そばに寄る」という物理的な意味でしたが、そこから「親身になって相手の気持ちを理解しようと努める」意味に変わっていきました。その方と話を進めていく中で、今年の方針説明でお話したアメリカのコラムニスト、アン・ランダースの言葉「子育てとは 子どものためにしてあげることではなく 子どもが自分でできるように 教えてあげることである」を思い出しました。子育てにおいて「寄り添う」の本当の意味を深く理解していないと、ともすればただやってあげることに終始し、いつの間にか自立から遠ざけてしまうことになるのではないかと感じます。子どもの特徴を踏まえどんな関わり方がその子の自立に繋がるのかを考え、そして促すことが子育てにおける「寄り添い」なのだと思います。
 さて、7月の徳目は「布施奉仕(ふせほうし)」「誰にでも親切にしよう」です。以前の園だよりでもお伝えした通り、子どもたちの力で「仲良く」遊べるようになることが当園で目指す姿の1つです。保育者がただ一緒に子どもたちと遊ぶのではなく、その中で関わり方を教え、少しずつ保育者が中に入る時間を減らしていくことを目標に日々取り組んでいます。
 「親切という名のおせっかい そっとしておくおもいやり」相田みつをの言葉ですが、人間関係においてこのバランスが難しいです。「寄り添う」という言葉の本当の意味に「より、沿う」ように気をつけていきたいものです…暑い日が続くので少しでも涼しくなっていただきたく敢えて駄洒落で締めてみました。(2023.7)

それが大事

2023/06/06
 6月になると、毎年恒例のりんごさんによる野菜の苗植えが行われます。子どもたちがお世話した野菜は、お昼に園のみんなで頂きます。今年もおいしい野菜が出来ることを心待ちにしているところです。ところで、植物を育てる際に、水や肥料は成長に不可欠なものですが、与えすぎてしまうと腐らせてしまいます。あえて制限することで、野菜が根をしっかり張ったり、養分をため込んだりして栄養価が高くなります。また、麦の苗は踏むことで根張りが良くなり、冷害に強くなると言われています。いずれにしても、大事にしようとたくさん与えすぎたり守りすぎたりするのはむしろ逆効果であり、適切な関わり方、関わるタイミングが良い野菜を育てる秘訣だということです。
 さて、6月の徳目は「生命尊重(せいめいそんちょう)」「命を大切にしよう」です。「大切に」という言葉は「守ること」のイメージが先行しますが、いかに自身の力で命を灯し続けられるか、つまり、自分の力で大きく成長できるように育てていくことが「大切に」することだと思います。同時に、子育てにおいて重要な視点です。何でも無条件で与えたり、ただやみくもに関わったりしてしまうことは、自立を妨げることに繋がります。そして、「何でも自分が優先」が叶わない集団においては、他者との関わりが円滑にいかなくなる原因にもなります。与える機会や関わる場面を見極め、メリハリをつけることこそが命を大切にすることに繋がるという視点を持ち続けていきたいものです。
 子育ては一筋縄とはいきませんが、負けない事・投げ出さない事・逃げ出さない事・信じ抜く事を信条に取り組んで参ります…このコラムの題名から結びを連想できた方、同世代ですね!(2023.6)

一事が万事

2023/06/06
 3月に行われたWBC。皆さんはご覧になったでしょうか。投打とも大活躍でMVPになった大谷選手はもちろんのこと、私は日系人から初めて選出されたラーズ・ヌートバー選手が非常に印象に残りました。本人はとても緊張していたと様々な記事で目にしますが、それを感じさせない朗らかな雰囲気と全力プレー、そして仲間の活躍を誰よりも喜ぶ姿は私の心を一気に鷲づかみにしました。そして、ペッパーミルパフォーマンス。「小さなことからコツコツと継続していけば、良いことが起きる」という意味が込められているそうですが、それをチーム全員で取り入れたことでより一体感を生みました。その点でも、侍ジャパンが優勝できたのはヌートバー選手の存在が必要不可欠だったと感じます。
 さて、5月の徳目は「持戒和合(じかいわごう)」「決まりを守り、集団生活を楽しもう」です。この度、インターホンと解錠ボタンはだっこなどして子どもに押させることなく、必ず大人が操作してくださいとお願いしたところ、早速取り組んで頂いております。ご協力本当にありがとうございます。もしかしたら、「ちょっとくらい」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そのちょっとくらいの積み重ねが望ましくない行動を学び、習慣化し、自分の思いが通らないと意固地になってしまうという姿に繋がってしまいます。小さな事ですが、日常生活の些細なことを園全体でコツコツと取り組んでいく先には、子どもたちの素晴らしい成長が見えてくるものと信じています。
 2ヶ月ほど前から思い立って、「ご飯をよく噛む」を実践していたら最近体重が減ってきました。嬉しくなり「ちょっとくらい」と多めにご飯を食べたらあっという間に戻ってしまいました。コツコツが定着するには時間がかかるものですね…。(2023.5)

10年目突入

2023/04/12
 ご入園・ご進級おめでとうございます。多くの方から入園・進級をお祝いして頂くことは、子ども達にとって新たな気持ちで今年度を迎えることができる機会となります。また、職員も改めて気を引き締める機会にもなります。保護者の皆様と連携しながら今年1年子ども達にとってベストな環境作りを進めていきたいと思います。
 園だよりを書き始めて10年目に突入しました。少し読み返してみると、こんなことを考えていたんだという振り返りや、頭の整理がされました。振り返ってみると、どうしたら目を留めてもらえるだろうと試行錯誤を繰り返した日々でした。やはり、面白い内容でないと気には留めてもらえません。そういう点ではまだまだ道半ばだと痛感しながら今も書いています。
 さて、4月の徳目(より良く生きるための基本となるもの)は「合掌(がつしよう)聞法(もんぽう)」「敬う心をもって人の話を聞こう」という意味です。子ども達に人の話を聞く姿勢を身につけさせるためには、やはりまず子ども達が注目する工夫が必要です。ただ「聞きなさい」というのは簡単ですが、それは子ども達自ら進んで聞こうとする姿ではありません。職員みんなで試行錯誤しながら子ども達が意欲的にお話を聞く姿になるよう模索しています。
 これまでの園だよりを読み返していたのは、ネタがなくて昔の自分からアイディアをもらおうとしていたからだということは、気づかないふりをしてもらえると助かります。そしていつもより文字が大きいことも…。(2023.4)

様々な視点をもつこと

2023/03/02
 【「じたばたしたり苦しんだりした時は、実はチャンスなんだ。自分に何が起きているかをしっかり観察すると、見えてくるものがあるみたいだ。」「いそがしい時間をすごしたあと…、何もしないでいると、のどかでいいなと感じる。何もしないでいる時間のあと、何もすることがないと、退屈を感じる」】仏教の思想を基に、ブタのキャラクターが悩みながら自分の生き方を見つめ直すシッタカブッタという4コマ漫画シリーズ。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。上記はそこから抜粋したエピソードです。この2つには一見共通点がないように感じますが、「視点の変化」という点で一致しています。「私たちは心のクセで物事を見ている」「私たちは物事をちゃんと見ていないから、苦しみを生み出す」「悩みの種を育てているのは自分自身」今一度噛みしめたい言葉です。
 さて、3月の徳目は「智慧希望(ちえきぼう)」、「希望をもち、楽しく暮らそう」です。「智慧」とは知識を持つことではなく「気づくこと」です。様々な立場や角度から見ることで新たな気づきが増え、これまでとは違うものの見方が出来るようになります。仏教において、私たちが苦しむ時は、かたよった見方をしている時であり、かたよった考えに振り回されて自分を見失っているいるからこそ苦しむと説かれています。一方で気づきを増やすことで見方が変わり、希望が持てるようになります。心のクセで物事を見がちな私たちは、ここが一番難しい部分であり、私自身、しょっちゅう固執によって自分自身を苦しめていると後になり反省する日々です。執着しない軽やかな心を育てたいものです。
 「なんのことはない 幸福の青い鳥は はじめから 自分といっしょにいたのだ」カッコイイ台詞ですね。私が言ったことにしたいのですが、これもまたシッタカブッタシリーズからの抜粋です…。(2023.3)

平常心

2023/02/04
 ぶどうさんからりんごさんまでが行う、月に1度のお寺でのおつとめ。自分の力で自分の気持ちを落ち着ける練習の一環として取り組んでいます。いつもは元気いっぱいの子どもたちも、比較的落ち着いて取り組めているこの活動。『やってみて、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』という言葉がこの活動を表していると感じます。1回目の時は、本堂でのおつとめの仕方を子どもたちに簡単に説明しますが、先生達も一緒に膝を折り、目をつぶって、手を合わせることで、子どもたちは真似をします。おつとめ後は園長からの話として、静かに鐘の音を聞いていられたことを伝えます。もちろん、子どもによっては目をつむったり、手をピンと合わせたりすることが難しい事もありますが、それでも声を出すことはほとんどなく、それぞれの出来る範囲で自分の気持ちを落ち着ける練習の時間になっていると感じます。
 さて、2月の徳目は「禅定静寂(ぜんじょうせいじゃく)」、「よく考え、落ち着いた暮らしをしよう」です。「気持ちを落ち着ける」という概念を教えることは難しいですが、一緒に体験することで感覚として身につけることは可能であると思います。好きなモノが常に身近にある状態は、それがなければ心を乱され、落ち着かなくなりやすい状態にもなり得ます。情報やモノに溢れ、いつでもどこでも好きなものを見たり聞いたり体験出来る、欲求が簡単に叶いやすい世の中だからこそ、意識的に欲求が叶う状態から距離を取り心を落ち着ける時間を大人も子どもも設けたいものです。
 「保育園への電話がボイスワープで自分のスマホに届いているかもしれないから。」と言い訳しながらスマホが手離せなくなっている今日この頃です。(2023.2)

笑いの力

2023/01/04
 【コロナ禍を理由に開催を見送る学校も多い中、東京都八王子市にある私立マキャベリ小学校では、「新しい運動会」としてプログラムを完成させた。花形競技でもあるリレー種目では、長さ2メートルのロングバトンを使用することで、適度な間隔を確保したままバトンパスが可能に。体育課の西条教諭は「不可能に思えることでも、小さな工夫を積み重ねれば実現できるということ。足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」と話す。(一部省略)】これは『虚構新聞』という、実際にありそうで実は存在しないネタをニュースとして掲載しているネットサイトの内容です。もしかしたらありそうだと感じてしまう雰囲気の文章はとても面白く、制作者の文才に脱帽します。また、「実は存在しない」を徹底しており、制作者自身の調査不足で現実にあったこと、もしくは記事掲載後に現実化した内容には、「誤報」と称して謝罪記事が掲載されます。実は上記記事も、その後現実化し謝罪文が掲載されました。虚構の記事であるにも関わらず一部ネットユーザーは事実と勘違いし、虚構新聞を批判する記事もありましたが、「確認もせず鵜呑みにする姿勢に問題がある」と批判をたしなめる声が上がりました。
 1月の徳目は「和顔愛語(わげんあいご)」「柔らかい顔で、優しい言葉を」です。こんな世の中だからこそ、悪意のない嘘や冗談は笑い飛ばす心の余裕が必要なのかもしれません。常に柔らかい顔で優しい言葉は難しいかもしれませんが、コロナにより疲弊し窮屈になった今こそ笑いに寛容になる姿勢は忘れずにいたいものです。
 今年のM-1について書きたかったのですが、今話題になっている優勝した毒舌漫才を上手に昇華させる自信が無く、虚構新聞にしてみました。足らぬ足らぬは文才が足らぬ…皆様も笑いのある年末年始をお過ごしください。(2023.1)

手間を楽しむ

2022/12/02
 とある学校だよりに非常に興味深い記事があったので、簡単にご紹介します。【大変優れた動物学者が、動物の好み、栄養、噛む力、歯の形等の条件を揃え、簡単に食べられる餌を開発し動物に与えたところ、病気が減り、繁殖力も高まったそうです。ところが数年後、霊長類のゴリラやオラウータンが突然暴れたり常に動き回ったりする行動が増えていきました。原因は餌である可能性が高まったため、これまで通り自然のものを与えたところ、その問題は解決しました。】このように書くと、開発した餌の成分が原因なのではと考えるかもしれません。しかし実は、自分で皮をむいてから食べる、ほじくって食べるといったような、動物自らが一手間かける機会を無くし、簡単に食べられる状況にしたことが原因だったそうです。そして、この簡単に欲求が叶うことによる弊害は、同じ霊長類の人間にも起こるそうです。これまでお伝えしていた「何でも簡単に要求が叶う状況は子どもたちに悪影響を与える」という内容とリンクすることだったため、ハッとさせられました。
 12月の徳目は「忍辱持久(にんにくじきゅう)」、「根気強く取り組もう」です。「根気強く」と書くと「苦手なものに向き合う」というイメージがつきますが、前回もお伝えした通り、子どもたちの特徴を踏まえた対応次第で、好きなもの、興味のあるものは増やせます。何でも簡単に要求が叶う環境を作らず、ちょっとした手間を自ら進んで楽しめるような習慣を身につけさせたいものであり、私たち大人がその対応の手間を惜しんではいけないと改めて考えさせられます。
 他のお便りから話題を引用、前回と似たようなまとめ方、楽をして園だよりを作るという「簡単に要求を叶えよう」としているのは私かもしれません…。(2022.12)

やり遂げる力

2022/11/06
 普段行くスーパーにレジのスペシャリストがいます。私は「レジの魔術師」と呼んでいるのですが、購入品をマイ買い物かごへ入れる順番を瞬時に判断し、無駄がなく素早い動きで的確に入れていきます。その姿は本当にずっと見ていられるほどで、レジ打ち選手権があれば全国でも上位になれるのではと思うほど惚れ惚れします。かといって、ロボット的かといえばそうではなく、お客さんへの対応は非常に柔らかくもあります。そのため、その方を見つけたら、例え他の列より混んでいても必ず並びます。会計が終わると見ているだけのこちらが、ちょっとした達成感のような満足感を得ることができ、すごく幸せな気持ちで買い物を終えることが出来ます。きっと、レジの仕事が大好き、もしくはお客さんへの想いをとことん突き詰めた結果の姿なのではないかと考えます。そして、その極めた姿は人に感動すら与えます。
 11月の徳目は「精進努力(しょうじんどりょく)」、「最後までやり遂げよう」です。人に言われてする努力はやはりどこかでくじけてしまいます。好きだから、極めたいからという思いが最後までやり遂げる力を生み出すのだと思います。そのためには、とっかかりで楽しいな、面白いなと思わせ、その思いを継続させる工夫を私たち大人がしていかなくてはなりません。好き嫌いがあって当然と決めてしまいがちですが、子どもには無限の可能性が秘めているとも言われているように、その子その子の特徴に応じた向き合い方で、興味を増やし高める方法はあります。十人十色とはこちら側の対応方法のことであることを肝に銘じ、これからも試行錯誤していきたいと思います。
 今、取り組んでいる視点をもっと早く知っていれば…我が子の子育てで痛感する日々です…。(2022.11)

背中を押す方法

2022/10/03
 先日、とあるニュース番組でナッジという理論の特集をしていました。ナッジとは「ひじでつつく」という意味だそうで、ちょっとしたきっかけで無意識に良い行動を促すことだそうです。その特集では、Google社がビュッフェ形式の社食で取皿のサイズをそれまでのものより2.5cm小さくしたところ、廃棄量が最大で70%も減ったという事例から、渋谷のセンター街にある喫煙所の吸い殻入れを2択の投票箱式に変えることで、ポイ捨てが1週間で10分の1に減少したという事例などが紹介されていました。習慣が身についている大人でさえ環境の変化だけで行動が変わる事例を受け、明照の取り組みに通じるものを感じました。小さい頃の環境設定の重要性とそれをきっかけとした継続の大切さを改めて考える内容でした。
 10月の徳目は「同時協力(どうじきょうりょく)」、「お互いに助け合おう」ということです。「協力」の素晴らしさは実体験を通してはじめて気づき定着していくものです。そして、言葉で表すことは難しいものです。これまで、保育目標の「仲良く」を子どもたちに「お友達が間違ったことをしていたら、優しく『違うよ』と教えてあげること」と伝えていましたが、少し後ろ向きで難しく、なんとなくしっくりきていませんでした。しかし、先日受けた研修で「『ありがとう』と言ってもらえる行動かどうか」という話を聞き、これまでより前向きでしっくりくる感覚がありました。これからは「お友達から『ありがとう』と言ってもらったり自分から伝えたりすること」と話していきながら、更に子どもたちの望ましい行動がどんどん増えてくるような環境を設定し、その行動が習慣化できるような保育を模索していきたいと思います。
 ドラマやバラエティーばかりではなく、ニュースも見ていることを知って頂けたら幸いです。(2022.10)

失敗経験による成功体験

2022/09/05
 剣道には「打って反省、打たれて感謝」という言葉があります。「試合で勝っても満足せず精進し、負けたら自分の弱点を教えてもらえたと有り難く感じなさい」という意味です。上手くいったとき以上に、上手くいかなかったときこそ成長する機会であり感謝を忘れてはいけないと、この言葉は教えてくれます。
 9月の徳目は「報恩感謝(ほうおんかんしゃ)」「あらゆることを有り難く感じよう」です。現在園では「成功体験」を意識した保育に取り組んでいますが、それはいつまでもお膳立てしてあげることではありません。最終的には周囲に左右されず、自分の力で成し遂げることが出来る姿を目指しています。始めは意欲を持たせるために、絶対に成功できるものを成功できる環境で提示し、大げさなくらい褒めますが、意欲が出てきたら環境を変えて取り組ませたり、少し難しくしたりと、少しずつ周囲の影響を受けず、そして進んで取り組む姿勢を育んでいきます。その過程において、子どもが失敗をしてしまうこともあります。しかし、その失敗を通し、切り替えてより良い方法を模索することが最善であることを体験出来るような環境も併せて整えます。失敗による新たな気づきは、周りに左右されず自ら行動する力に繋がります。つまり、適切な失敗経験による気づきそのものが、より重要な成功体験となるのです。このさじ加減が難しい部分でもありますが、どの場面でどれほどの失敗が必要か、という視点も持ち合わせながらこれからも保育を進めていきたいと思います。
 今回のテーマにぴったりなドラマが現在放送されているのですが、いつもテレビばっかり見ていると思われたくなかったので、剣道の話題にしてみました。そんな、ちっぽけなプライドが一番成長しない要因ですね…(2022.9)

楽しさをいかに伝えるか

2022/08/02
 25年間世界陸上のメインキャスターを務めていた俳優の織田裕二さんが、今回をもって卒業されるそうです。皆さんはご覧になったでしょうか。「世界陸上=織田裕二さん」とイメージできるくらい印象的ですが、正直にお話しすると、これまで日本人選手の競技の様子だけを見る程度で、そこまで織田さんのコメントをしっかりと聞いたことはありませんでした。しかし、今回織田さんのコメントを聞くことで、普段見ない競技に興味を持ったり日本人以外の選手にも感情移入したりと、これまでの世界陸上より楽しめ、なんでもっと早く気づかなかったのかと、ちょっと損をした気持ちになりました。実は織田さん、キャスター就任当初はそこまで陸上に詳しくなかったそうです。しかし、そこから色々勉強して楽しさを知り、どんどん人を魅了するコメントが増えていきました。伝える側がどれだけ楽しさを知っているか、そしてその楽しさをいかに伝えるかが大事なのだと感じた世界陸上でした。
 8月の徳目は「自利利他(じりりた)」「自分を高め人に尽くそう」です。子育てにも上記のことは重要なのではと思います。何か取り組みをする時に「当たり前のことだから」「しなければいけないことだから」と思って取り組ませるのか「楽しいよね」「面白いよね」と思って取り組ませるのかでは、やはり子どもたちの興味の持ち方や取り組み姿勢も変わってきます。自分の得意ではないこと、興味がないこと、当たり前だと思っていることこそ、楽しさ、面白さを見つける努力が大人側に求められることであり、それも「自利利他」の一つではないかと感じます。
 今回の原稿は「私史上“最速”」で書き上げることができました。織田裕二さんのお陰です。地球に生まれて良かった~。(2022.8)